国家公務員たる裁判所事務官が、自宅に女性の遺体を隠していたとして逮捕された。それだけでも類を見ない事件なのに、事務官の暮らしぶりも極めて異質だったことで、世間の注目を集めている。 【写真を見る】「冷凍庫に遺体が…」 現場となった岩瀬親子の自宅 社会部デスクによれば、 「4月3日、滋賀県警捜査1課と長浜署が男3人を死体遺棄容疑で逮捕、送検しました。長浜市の住宅で、大型冷凍庫内に女性の遺体を遺棄した疑いです。遺体に目立った外傷はなく衣服を身に着けた状態でした」 遺書に“家に遺体が遺棄されている” 逮捕されたのはこの家に住む大津地裁長浜支部事務官の岩瀬龍彦(49)と、その父親で無職の岩瀬浩一郎(72)、そして大阪府堺市東区のアルバイト清掃員、野中秀紀(63)の三容疑者で、 「岩瀬親子と野中は親族関係にあり、遺体は野中の妻とみられます。ですが遺体は数年以上の長期間にわたり冷凍庫内に放置されていたため、身元と死因を特定するのに時間がかかっています。おもに長浜簡易裁判所で働いていた龍彦は、この家から出勤していました」 岩崎龍彦容疑者が事務官として働いていた大津地裁長浜簡易裁判所が入る大津地裁長浜支部(長浜市) 事件発覚の経緯もまた異例だった。 「堺市中区にある一軒家で、57歳の男性と71歳女性の夫婦が首つり自殺をしました。現場に残された遺書には“滋賀県長浜市の家に遺体が遺棄されている”“遺体は5年前に死亡した野中の妻”などと記されていた。遺書が見つかった4月1日、その内容が大阪府警から滋賀県警へと伝えられ、遺体発見に至ったのです」 この夫婦も、三容疑者の親族とみられている。 「何らかの金銭トラブルが」 夫婦の知人が言う。 「二人はスナックに勤めていました。旦那さんが店の従業員、奥さんがママでね。二人ともパチンコが好きで、自宅からほど近い店舗によく通っていた。ただ、仕事やパチンコが理由かどうかは定かではないものの、なんらかの金銭トラブルを抱えていたようです。自宅前に素性の知れない人が乗った車が止まっているのを何度か見ましたから」 年の差夫婦はなぜ、自死を選び、遺書をつづったのか。 「三容疑者との関係も含め、判然としません」 と、先の社会部デスク。 「夫婦が“野中の妻の遺体遺棄を知る自分たちが書き残さなければ、三容疑者の罪が公になることはない”と考えたのは間違いない。野中が妻と息子たちと暮らしていたのは、堺市中区の夫婦宅からわずか1キロほどの場所。それが数年前に妻だけが長浜市の岩瀬親子の家へと移り、連絡がつかなくなっています」 親子ともに離れを使って出入り その岩瀬親子宅も金銭面での問題を抱えていた、と地元記者が語る。 「親子が遺棄現場となったいまの家に入居したのは10年ほど前。浩一郎の母、つまり龍彦の祖母と三人で越してきました。その昔、高校卒業後に大阪に出た浩一郎は、通信関連会社で働き、家庭を築いた。龍彦も大阪で生まれています」 ところが浩一郎が妻と別れた際に金銭トラブルに巻き込まれ、20年以上前に実家に戻っている。 「その実家も売り払わざるを得なくなり、いまの家に入りました。そして5〜6年前に祖母が亡くなると1年を通じて雨戸が開くことはなくなり、母屋で父親の浩一郎が、ごく小さな離れで息子の龍彦が暮らしていた。親子ともども離れを使って出入りするという奇妙な状況になりました」 経済的な理由から冷凍庫に入れていた? いつから野中の妻の同居が始まったかを知る近隣住民もいないという。 「あくまで現時点での見通しですが、“殺人”などで逮捕者が出ることはないでしょう。遺体の女性は病死とみられ、三容疑者や自殺した夫婦が女性の殺害に関与した可能性は低い。経済的理由から、病死した女性の処理をすることができずに冷凍庫に入れた、などの“犯行動機”が考えられます」 人が人を裁く司法の場で働く事務官が遺体と同居していた——。謎多き事件の全貌が法廷で明らかになる日は、遠くはないだろう。 「週刊新潮」2025年4月17日号 掲載