2023年6月2日、元タレントの中居正広氏はフジテレビの元女性アナウンサーを呼び出し、その後の行動をフジテレビとフジ・メディア・ホールディングスが設置した第三者委員会が「業務の延長線上の性暴力」と認定した。この「業務の延長線上」という視点から委員会の報告書を読み直すと、中居氏の“女性観”に関する興味深い事実が浮かび上がる。 *** 【写真】「ふざけてる訳じゃないんだよね…?」中居正広の声明を発表した“公式サイト”がゆるすぎる あまりにシュールな実際の画面をみる 第三者委員会は匿名が必要だと判断した人物について、報告書に登場する順にアルファベットのAから始まる仮名で表記した。中居氏から性暴力の被害を受けた元アナウンサーは最初に登場するため女性A氏(以下、A氏)。2番目のフジテレビ元編成局幹部はB氏……という具合だ。アルファベットは苗字や名前のイニシャルを示しているわけではない。 仮に結婚しても「別居が前提」と話していた中居氏 以下、報告書の記述に基づいて進めよう。2021年11月ごろ、有力タレントのU氏と中居氏、そしてフジのB氏は都内にある外資系ホテルのスイートルームで飲み会を開くことを企画した。 飲み会は12月に開かれることになり、B氏は12月6日、A氏にLINEで「もし12月18日(土)の夜に、タレントUさんとの飲みにお誘いしたら、来られる可能性ありますか?」と打診した。 スケジュールの関係などからA氏は即答できなかった。11日にB氏は再びA氏に連絡し、タレントU氏のほかに中居氏、女性アナウンサーのQ、R、Sの3氏などがメンバーだと説明。予定が終わり次第合流してほしいと頼み、女性は少しの時間でも参加すると答えた。 18日の午後8時ごろ、ロケの仕事を終えた女性A氏は外資系ホテルの1階エレベーターホールに到着。B氏に電話をかけると、スイートルームに案内された。 退出を命じた中居氏 ここで第三者委員会は重要な指摘を行っている。B氏はA氏に対し、会場はスイートルームだと伝えていなかったことが調査で明らかになったという。 A氏はホテルに到着するまで、飲み会はホテル内のレストランで開かれると考えていた。ちなみに第三者委員会の聞き取りに対してB氏は会場がスイートルームだと伝えなかった理由について「記憶にない」(144ページ)と回答した。 当たり前のことだが、飲み会の会場が、レストランなどの開かれた空間と、ホテルのスイートルームという密室ではニュアンスが全く異なる。2021年に新型コロナが猛威を振るっていたのは事実だが、前者のほうが「業務の延長線」というイメージに合致するのは言うまでもない。 飲み会で交わされた会話はテレビ番組の話や、U氏が芸能界引退を考えていることなど、「業務の延長線」と見なせる内容もあったようだ。だが第三者委員会の調査に「性的な発言があった」と証言した出席者もいたという。 A氏は午後9時半までにはスイートルームを出た。すると中居氏は午後10時ごろ、B氏を含むスタッフに退出を促した。第三者委員会は報告書で中居氏は退出を《働き掛けた》(144ページ)と表現しているが、中居氏とB氏の力関係を考えれば、命令に等しかった可能性は否定できない。 スイートルームでのセクハラ スタッフは退出し、スイートルームは中居氏とタレントU氏、女性アナウンサーのR、Qの2氏だけとなった。密室の中に男女が4人。その後、中居氏はどんな行動に及んだのか、報告書から引用しよう。 《Q氏によれば、先にR氏がトイレに行くために席を立ち、その後、後を追うようにタレントU氏が席を立って離席した記憶である旨供述する。Q氏は、タレントU氏及びR氏が離席している間、中居氏と二人だけになる時間帯があり、その間中居氏において、Q氏の膝や肩、鎖骨付近に手を触れる、Q氏の顔に自身の顔を近づける等の行動があったため、中居氏の機嫌を損ねないように手をどけたり、身体を離すなどしながら会話を続けることでやりすごした旨述べる》(146ページ) 女性A氏にとって、中居氏が出席しているスイートルームの飲み会に駆け付けることは「業務の延長線上」という理解だった。 だが、中居氏の目的が異なっていたことは報告書からも明らかだ。中居氏と女性A氏との間には、初期の段階から性暴力の要素が垣間見えていたことになる。この時は難を逃れた格好となったA氏だが、自分が先に退出できた理由を「ノリが悪いから先に帰されたのではないか」(21ページ)と感じたという。 社員を助けないB氏 第三者委員会はB氏も2回、フジテレビの女性社員に対してセクハラに及んだ事実を明らかにした。1回目は2022年ごろで、後輩の女性社員を食事に誘い、その席でキスをしようとしたり、体を触ったりするセクハラを行った。 2回目は2023年、後輩の女性社員から仕事の相談を受けたため食事に誘い、その席では下ネタの会話に終始。さらにキスをしたり体を触ったりするセクハラを行った。 A氏が深刻な被害を受ける前から、中居氏もB氏もセクハラ行為の“前科”があったことが分かる。 スイートルームの飲み会で中居氏はスタッフに退出を指示し、彼らが従ったのは前に見た通りだ。置き去りにしてきた女性アナウンサーR氏とQ氏のことを、B氏が心配していた姿も報告書には記載されている。 しかしながら第三者委員会は調査の結果、B氏は「タレントU氏が男性2人女性2人になる状況を望んでおり、それを受けて中居氏がスタッフに退出を求めた」のだと明確に認識しており、それに唯々諾々と従ったと指摘した。 抽象的で曖昧な反論 第三者委員会はB氏の行動を「置き去り」と批判。B氏はタレントU氏や中居氏と近い関係にあり、自分のためにもフジテレビのためにも2人との関係維持が必要だったのが背景にあったとした。 一方で心配する気持ちもある。そこでB氏は「まさか、U氏や中居氏が女性アナウンサーに対し、その意思に反して行為を強要するなどの最悪の事態は発生しないだろう」と思い込むことにした。 しかし、女性アナウンサーのQ氏は実際にセクハラの被害を受けた。第三者委員会はB氏が《女性2人を残して退出することは拒むべきだった》と総括。B氏に《アナウンサーを危険から守ることよりも、タレントU氏及び中居氏への配慮を優先させる》との思考パターンが存在すると指弾した。 中居氏は第三者委員会に対し、《Q氏がこの飲み会にいたかどうかすら》覚えていないなどと回答した。委員会は中居氏の反論は抽象的で曖昧だとし、《信用性に欠ける》と一刀両断。これに対してQ氏の説明は部屋の外にいたスタッフとのLINEの会話履歴など客観的な証拠にも一致しており《相対的に信用性が高い》と認定した。 こうした経緯を経て、2023年5月にBBQの会が開かれる。中居氏と男性タレント2人とのゴルフが悪天候でキャンセルとなり、中居氏はBBQの会を開くことを決め、B氏にショートメールを送った。(編集部註:中居氏のメールには一部、誤記などがある) 皿洗いの指示 中居氏が「男同士じゃつまらんね。女性いるかなね。一般はさすがにね。となり、フシアナ誰か来れるかなぁ」(註:原文ママ)と送り、B氏はA氏を提案する。 5月31日の午後2時、B氏とA氏は合流した。中居氏はゲストルームのように使用しているマンションがあり、その近くの駅で待ちあわせた。 タクシーで中居氏のマンションに向かう際、車中でB氏はA氏に「仕事でプラスになる」と言ったという。BBQの会で中居氏と会食することは、まさに「業務の延長線」だとの説明をB氏自身が行っていたことになる。担当記者が言う。 「業務の延長線上に位置づけられる会食であれば、誰だって座の中心に位置する人物と交流を深めようとするはずです。例えば大物政治家が記者クラブと懇親会を開いたとしましょう。出席した記者は政治家と会話し、その人間性を理解しようと努めるはずです。記者が男性でも女性でも変わりません。ところが『仕事でプラスになる』とアドバイスされたA氏がB氏にどのように振る舞えばいいか尋ねたところ、B氏は皿洗いなどをして働くようにと指示したのです」 中居氏のマンションにはテラスがあり、そこで出席者は肉を焼いた。男性タレント2人、TBSの男性社員2人、B氏とフジテレビの女性アナウンサーT氏、女性スタッフなどが飲食と会話に興じた。 中居氏と、脇に立つA氏 「一方、A氏は皿洗いや配膳、そしてキッチンで料理を作る中居氏の手伝いを担当し、テラスでの会話には、あまり参加しなかったそうです。こうなると、飲み会の位置づけが異なってきます。本来であれば、A氏は女性アナウンサーとして様々な参加者と交流し、テレビ局の社員として見聞を広めるのが『業務の延長線上』にある飲み会でしょう。ところが、実際は女性として従属的な家事労働を手伝うことになった。B氏はA氏に皿洗いを指示することで、『中居氏はA氏に好感を持つはずだ』と判断していたのではないでしょうか。仕事上のプラスとは、あくまで中居氏に気に入られるという意味だったかもしれないのです」(同・記者) BBQの会は午後8時ごろに解散となった。中居氏は空腹を訴え、B氏とA氏の3人で寿司屋に向かった。食事をしながらB氏は「(中居氏とA氏は)つきあっちゃえばいい」との冗談を口にしたという。この発言は非常に示唆的だ。 「中居氏が大勢の客を呼び、自らキッチンに立って料理を作ってもてなす。その脇にはA氏が寄り添い、皿洗いや配膳を手伝う。“夫”のイメージを受ける中居氏が料理担当するのは古典的な男性観からすると新味かもしれませんが、その脇でA氏が献身的に家事労働に勤しんでいるのです。“夫唱婦随”といった伝統的な夫婦像を連想する人も少なくないでしょう。だからこそB氏は『つきあっちゃえばいい』という冗談を口にしたのではないでしょうか。中居氏は女性A氏を気に入ったのは明らかで、BBQの会から2日後の6月2日、『今晩、ご飯どうですか?』とのショートメールを送信しました」(同・記者) 問題視される女性観 第三者委員会は「2023年6月2日に女性Aが中居氏のマンションの部屋に入ってから退出するまでの事実」を独自に調査し、「女性Aが中居氏によって性暴力による被害を受けた」と認定した。 ネット上では中居氏の“女性観”が取り沙汰されている。例えば2023年8月、中居氏はMCを務めるバラエティ番組「中居正広の金曜日のスマイルたちへ」(TBS)に出演し、独特の結婚観について語った。この発言に再び脚光が集まっている。 中居氏は結婚に否定的な意見を披露した上で、たとえ結婚したとしても別居は大前提。「俺が東京で、相手が川崎にいるとかだったらギリで。飯は夕方に来て作ってもらって、俺が帰ってくるまでには帰ってほしい」とカメラの前で発言した。 視聴者を喜ばせるための冗談だったのかもしれない。とはいえ、「飯は夕方に来て作ってもらって」の部分に旧来的な女性観が透けて見えると眉をひそめる人もいるに違いない。実際、Xで「中居 男尊女卑」で検索を実施すると、次から次へとポストが表示される。一部をご紹介する。 《中居くんの件で思ったのは、男性って基本やっぱり男尊女卑な思考があるんだなーって思う》 《中居、フジテレビの事件に思うけど、やっぱり男尊女卑の考えが世間で今も横行してるんだなって思う》 《皆言ってるように女の子呼ぼうかと、日本は女性をアシスタント的に使う男尊女卑文化が根強い》 中居氏は52歳。A氏との年齢差を考えれば、夫婦というより親子という関係が自然であるのは言うまでもない。 デイリー新潮編集部