「めちゃ…待ってました!」 やっと「トヨタ・クラウン」が勢揃い! クロスオーバー/スポーツ/セダン/エステート、同じクラウンでも全然違う! 徹底解説!【試乗記】

クラウンには型があったからこそ…「型破り」ができた。 4つの新生クラウンとは  2022年7月に16代目クラウンが世界初公開されてから約2年半、エステートの登場によりクラウン・シリーズが完成しました。    そもそも、なぜ16代目は大きく変わることができたのでしょうか。 やっと揃った「16代目クラウンシリーズ」  そのキッカケは2020年頃の「商品化決定会議」でした。15代目はTNGAの採用により走りは大きくレベルアップしていましたが、販売は苦戦。開発陣は魅力アップのためにマイナーチェンジの仕込みを行ない、この会議に臨みました。 【画像】超かっこいい! これが「赤いクラウンのワゴンSUV」です。画像を見る!(30枚以上)  しかし、当時社長だった豊田章男氏から「本当にこれでクラウンが進化できるの?」と疑問を呈され、何とボツ。  この会議に出席していた中嶋裕樹氏は「疑問と言うよりも“怒り”に近かった」と振り返ります。  ちなみに商品化決定会議でのボツは社内では極めて異例の出来事だそうですが、豊田氏は開発チームに「マイナーチェンジを飛ばしてもいいので、もっと本気で考えてみてほしい」と伝えました。  その本質は「このままではクラウンは終わる、何としてもクラウンの新しい時代を作らなければならない」と言う危機感だったのでしょう。  当の開発チームは、「ボツになって『じゃあ、どうするの?』と言う心の叫びが無かったと言えば嘘になりますが、誰もが心のどこかに『クラウンは今のままでいいのか?』と言う想いがあったので、それを社長に見事に見破られた感じでした。そのため、悩むよりも『やろう!!』と言う雰囲気の方が強かったです」と当時を振り返ります。  まず16代目の開発を行なうに辺り、開発チームは歴代クラウンがどのように生まれてきたかを勉強し直したそうです。  そこで解ったのは、“クラウンらしさ”とは先輩たちがその時代に良いと思う事を、とにかく苦しみながら形にしてきた挑戦の積み重ねだった事だと。だからこそ、従来の枠に囚われてはいけないと決断したのが、「セダン」、「日本専用車」からの脱却でした。  ただ、枠を外してみると、「シルエットはこんな感じ」、「目線は高いほうがいいよね」、「乗り降りがしやすい方がいいよね」、更に「将来的な事を考えると床下にスペースがあったほうがいいよね」など、これまでに無い様々なアイデアが出てきたと言います。  それらが全部両立できるパッケージこそが、「セダンのようでセダンではない」と言うクロスオーバーの提案でした。  実は当初はクロスオーバーのみの開発でしたが、ある程度カタチになった時期に中嶋氏は豊田氏から「セダンも考えてみないか?」と言う提案を受けたと言います。  中嶋氏は「正直言うと耳を疑いましたが、『セダンの呪縛が解けた今だからこそ、新たな発想でセダンを作りなさい』と言う問いかけに聞こえました」と。更に「カムリをベースにするのか? 15代目をベースにするのか? MIRAIをベースにするのか? 今決めて!!」と言われ、即答で「素性が最も良いMIRAIでやります」と伝えたそうです。  更に、セダンもやるなら「皆が求めるクラウンをもっと提案してみよう」と言う声から生まれたのが、スポーツとエステートでした。  つまり、多様性が求められる時代に合わせた“群”としての提案。  16代目は「トヨタのフラッグシップ」から「あなたのフラッグシップ」への変革でもあったのです。 2022年7月に16代目クラウンが世界初公開された…それから約2年半経ち…4つが揃うことに  豊田氏はこの4つのクラウンを見て、開発チームに「ちょっと調子に乗りすぎていない? でも、これは面白いね」と。更に試験車両のステアリングを握って「これぞ、新時代のクラウンだね」と笑顔で語ったそうです。  そんな16代目のクラウン・シリーズですが、各々のモデルにどのような個性や味が備えられているのでしょうか。  今回、同じ場所・同じ道で試乗を行ない検証してみました。 16代目のトップバッター! セダンのようでセダンではない…「クロスオーバー」とは  ちなみに各モデルのポジショニングは横軸に「理性〜感性」、縦軸に「基盤〜創造」のグラフで位置づけされていますが、そのセンターに位置するのが、セダンとSUVのいい所取りと言うコンセプトで開発された「クロスオーバー」になります。  エクステリアはスピンドルシェイプが特徴だった4代目を彷彿とさせる丸みを帯びたデザインを採用。  登場時にはかなり個性的に見えましたが、シリーズが揃った今だとプレーンかつクリーンな造形が逆にオーソドックスに見えてきます。  インテリアはデビュー時に「クラウンにしてはちょっと」と質感の面で多くの人から指摘を受けましたが、2024年の改良でしっかりとカイゼンされています。 16代目のトップバッター! セダンのようでセダンではない…「クロスオーバー」とは  パワートレインは2種類のHEVを設定。シリーズパラレル式(=THS II)はパフォーマンスと燃費のバランスの良さが魅力ですが、アクセル開度が大きい時はややノイジー(音量よりも音質)なのが難点。  一方、RSに搭載のパラレル式のデュアルブーストハイブリッドは、従来のV6-3.5Lに匹敵する力強さとハイブリッドらしからぬダイレクト感と小気味良さを備えますが、燃費はちょっと。  フットワークは電動AWDやDRSなど制御モノをフル活用していますが、ハンドリングは極めて“普通”でトヨタ車の共通の味「Confident(安心)&Natural(自然)」に則った仕上がりです。  中でもデュアルブーストハイブリッドはリアのe-AXLEを活かした駆動方式の概念を変える旋回姿勢(まるで縦置きFRのようなイメージ)に驚きます。  デビュー時のモデルは操舵フィールや乗り心地の面で雑味が目立つところもありましたが、2024年の改良でブラッシュアップ。より滑らかな旋回、よりしなやかな&シットリした足の動きにアップデートされています。  総じて言うと「気負いなく高性能を味わえる」新トヨタスタンダードと言っていい総合力で、16代目のセンターにふさわしい万能性を備えた1台と言っていいでしょう。 その見た目にみんなが惚れた! 「スポーツ」の魅力とは? 「ドライビングを最も楽しめるクラウン」なのか  感性/創造と最もエモーショナルなキャラクターの「スポーツ」は16代目の若返りを最も象徴するモデルとなります。  エクステリアはクロスオーバーより短い全長/ホイールベース、前後オーバーハングを活かした凝縮感あるデザインで、リアフェンダー周りのボリューム感は欧州の高級スポーツSUVと比べても負けず劣らずの造形です。  インテリアは前席優先のレイアウトで、後席は必要十分なスペースに割り切られています。  パワートレインはHEVとPHEVを設定。HEVはクロスオーバーと同じスペックですが、スポーツのキャラクターに対しては若干物足りなさを感じる所も。 その見た目にみんなが惚れた! 「スポーツ」の魅力とは? 「ドライビングを最も楽しめるクラウン」なのか  一方、PHEVはEVモードの静かで滑らかな走行フィールとHEVモードのシステム出力306psを活かした余裕の動力性能を両立。日常域も回転を上げないトルクフルな走りはクラウンにマッチした特性で、キャラクター的にはこちらほうがお勧めです。  フットワークはクロスオーバーと同じ方向性ですが、「より機敏」、「より俊敏」、「より曲がる」と言う形容詞がプラスされます。過去のクラウンで例えるならば、明確に「アスリートの後継」と呼んでもいい味付けです。  実際に走らせるとボディサイズよりも「小さく」、「軽く」感じる走行フィールで、SUVと言うよりもスポーツセダンに近いので、サーキット走行も十分許容するフットワークと言っていいでしょう(重いのでブレーキは注意)。  乗り心地はシリーズの中では引き締められていますが、開発陣の「硬くないスポーツ」の言葉通り快適性は十分以上のレベルを実現。  その中でもPHEVはバッテリー搭載による低重心化とAVSの相乗効果により、日常域ではスポーツを感じさせないしなやか&優しい乗り心地、速度を上げるとスポーツらしい骨太でシャキッとした乗り心地を両立しています。  このように従来のアスリートを遥かに超えるパフォーマンスがスポーツの最大の特徴であり、ドライビングを最も楽しめるクラウンと言っていいでしょう。 王道セダンここにあり! ショーファーカーとなる「セダン」とは? 初代セルシオの感動が蘇るレベル!? そんなスポーツの対極にあるのが、理性/基盤と最もフォーマルなキャラクターの「セダン」です。  パーソナルにもビジネスにも応える「ニューフォーマル」に挑戦したモデルで、16代目の中では唯一となる縦置置きFRベースとなるモデルです。  エクステリアはオーソドックスな3BOXではなく水平基調&クーペライクなプロポーションでとにかく伸びやかな印象。  インテリアは他の3台と同じインパネデザインを採用するも、細部の仕立てはより高品質、高精度に仕上げられています。  後席は3000mmのロングホイールベースを活かした足元広々な空間とおもてなし装備が魅力。前席よりも高めのシートポジションも相まって想像している以上に開放感は高いと思います。  パワートレインはクラウン初となるFCEVを設定。静かで滑らか、そして力強さは言わずもがな、電動車ならではのレスポンスの良さやピッチングを抑えた車両姿勢も相まって、2トン近い車両重量を感じさせない動力性能を持つ。  静粛性はGA-Lの高剛性ボディに加えて入念な吸引・遮音・防音対策なども相まって、初代セルシオの感動が蘇るレベルです。  HEVは2.5L+THSIIと4ATを組み合わせたマルチステージハイブリッドを搭載。  THSIIよりも電動車感が強いフィーリングに加えてTHSIIらしからぬダイレクト感が高いメリハリある走りを備えていますが、EV→HEV切り替えに一瞬あるモタツキ、エンジン始動時に乗員に「ブルン」と伝わる振動、更には回生時のATのシフトショックなど、スムーズさに欠けるのは残念な所です。  フットワークはFRレイアウトの旨味を活かし、「よりスッキリ」、「よりスムーズ」、「より素直な」な走りが印象的。サスペンションは16代目の中でも最もソフトな設定だと思いますが、姿勢変化やロールは抑えられた安定したコーナリングが可能。  この辺りは基本素性(低重心、ワイドトレッド、前後重量配分に優れる)の良さが効いているはずです。 王道セダンここにあり! ショーファーカーとなる「セダン」とは? 初代セルシオの感動が蘇るレベル!?  乗り心地は路面へのアタリ、足の動き、ショックの吸収性など全てにおいて「優しい」の一言です。  凹凸を乗員に伝えないと言う観点では、センチュリーを除くトヨタ車の中で最良、いやレクサスを含めてもトップに位置すると思います。  20インチ仕様は45タイヤ装着とは思えない入力の優しさと無駄な動きを抑えたバネ上のフラット感の見事なバランス、19インチ仕様は「エアサス付き?」と錯覚するレベルで、ストロークでショックを吸収する足さばきはクラウンの伝統を色濃く受け継いでいます。  ただ、GA-Lの難点の1つである凹凸が続く路面を走行した時にリアがブルっと来る横揺れ(恐らくバンプステアが原因)が残ってしまうのは残念な所です。  とは言え、ショーファーニーズにも対応する居住性と静粛性、そして快適性の高さは、歴代クラウンで例えるなら、「ロイヤル」の個性をより際立たせたモデルと言えるでしょう。 「エステート」その名は18年ぶりに復活したが…純ワゴンではなくワゴン×SUVに  そして、最後は理性/基盤の「エステート」です。  ネーミングは11代目のそれを踏襲していますが、ワゴンとSUVの融合をコンセプトに生まれ変わったモデルとなります。  エクステリアは5m近い全長とロングホイールベースを活かした伸びやかなフォルムが特徴ですが、バンパーイングリルの処理やエモーショナルになり過ぎないシンプルでクリーンな面構成から他のクラウンたちと比べるとややカジュアルな印象です。  インテリアはクロスオーバー/スポーツに準じますが、PHEVのみに設定される「グレイッシュブルー」は他のモデルにも水平展開したくなるくらい、素敵なコーディネイトです。  後席はセダンに匹敵する足元スペースと余裕の頭上スペースを確保。ガラスルーフを開くとより開放感ある空間となりますが、特等席ながらもおもてなし装備がシートヒーターくらいなのが残念。  注目のラゲッジルームは後席を倒すと2mの広大でフラットな空間が生まれます。大事なモノの積み込みだけでなく、最近話題の車中泊も楽々こなせるスペースと言えるでしょう。 注目のラゲッジルームは後席を倒すと2mの広大でフラットな空間  パワートレインはHEVとPHEVを用意するのはスポーツと同じですが、HEVはボディサイズや車両重量アップ、積載性をなど考慮してフロントモーターはPHEVと同じ182ps/270Nmを搭載しています(クロスオーバー/スポーツに対して約5割増し)。  実際に走らせると、PHEVのスーッと滑らに走る質の高さは言わずもがなですが、HEVも負けていません。  具体的には実用域でEV走行の粘りが増す→エンジンが始動しても回転を上げずにグッとトルクで加速していく“余裕”がある→静粛性も高い→高級車らしいと、スペック以上にメリットが多いと感じました。  逆を言えば、クロスオーバー/スポーツもこのシステムにアップデートすべきでしょう。  フットワークは「真っすぐ走るのに、よく曲がる」と言う一粒で二度美味しい走りに仕上がっています。  その味付けは「クロスオーバーより俊敏、スポーツよりも穏やか」と言う絶妙な塩梅です。個人的にはロングホイールベースをカバーするDRSの制御が少々主張しすぎな感があるので、もう少し穏やかでいいので自然なほうがエステートらしいかなと。  乗り心地は入力の優しさ、シットリとした足の動き、時間ではなくストロークで抑えるショックの吸収性などはセダンに匹敵。  個人的には凹凸が続くようなギャップでのバネ下のバタつきの少なさや乗員の体の揺すられにくさはシリーズトップだと思いました。この辺りはPHEV/HEV共通の印象ですが、AVS装着のPHEVのほうがより上質かなと。  このようにエステートはシリーズの中でフレキシブルな用途に応じるユーティリティと走りから、「新グランドツアラー」と呼びたくなる一台だと思いました。 「エステート」その名は18年ぶりに復活したが…純ワゴンではなくワゴン×SUVに  そろそろ結論に行きましょう。  今回4つのクラウンに乗って思った事は、クロスオーバーの「気負いなく高性能を味わえる」を中心に、与えられたキャラクターが見た目・走りを含めて解りやすく表現されている事です。  歴代クラウンを振り返ると多彩な車種バリエーションを備えていた時代は味がどれも変わらず。  一方、直近のクラウンは1車型(=セダン)でキャラクター分けをしていましたが、やはり走りだけでは差別化がやり切れず、結果的に中途半端になってしまい。  そういう意味では、16代目は各々に見合ったデザインと走りの味の合わせ技ができた事で、「クラウンらしさ」を更に突き詰める事ができたと思っています。  要するに、16代目の「変革と挑戦」はクラウンのDNAをより濃厚にしたと言ってもいいのかもしれません。  ちなみに16代目のポジショニングの中で、空欄なのが感性/基盤です。  その言葉から想像するに「奇を衒わない正統な派生モデル」となりますが、一体どのようなモデルが考えられるでしょうか。  個人的には快速ステーションワゴン(11代目エステートの生まれ変わり!?)、もしくは流麗な2ドアクーペ(スープラが復活したから、次はソアラ!?)などがラインアップされたら、より魅力的だと思いませんか。

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