【全2回(前編/後編)の前編】 商談にしろ、打ち合わせにしろ、初対面の人との顔合わせには緊張が伴うもの。 【写真を見る】緊張で頭が真っ白になった時の「切り抜け方」とは でも、相手に好感を持たれ、その後の会話をスムーズに運ぶための「失敗しない」対話の始め方があるんです——そう語るのはプロインタビュアーの早川洋平さん。 なにはさておき最初にするべきこと、その次に確認すべき三つのこと、緊張で頭が真っ白になった時の立て直し方——これらを頭に入れておくと失敗のリスクはグンと下がるというのだ。以下、プロの教えに耳を傾けてみよう。(引用はすべて早川氏の著書『会う力 シンプルにして最強の「アポ」の教科書』より) *** 時間を作ってくれたお礼は絶対に 対面時、絶対に忘れてはならないのはお相手に時間を作ってくれたことへの感謝の言葉を述べること。当たり前のことと思う方もいらっしゃるかもしれませんが、緊張のあまりうっかり伝えそびれてしまう可能性もゼロではありません。ぜひ忘れずにいただけたらと思います。 初対面の人と顔合わせで、相手に好感を持たれ、その後の会話をスムーズに運ぶための「失敗しない」対話の始め方とは 対面時にまず確認する三つのこと あわせて、次の三つも実践することでよりスムーズに本題に入れるでしょう。 (1)シンプルな自己紹介 ポイントはお相手の立場になって短く簡潔に、です。念願のお相手を前に「自分がどれだけこの日を待ちわびていたか」「自分が何者か」を熱く伝えたくなる方もいるかもしれません。ですが、そこは冷静に。ここまでお伝えしてきた各ステップやこれからお伝えしていくことをひとつひとつ実行していけば、自ずとあなたの想いや本気度は伝わります。 今日なぜこの場があるのか。ゴールは何なのか。本題に入る前にお互いしっかりと共有できれば、双方にとってよりよき場となるでしょう なお、紹介者の方がいればこのタイミングでお伝えすること。お相手は安心し、その後の会話がよりスムーズになるでしょう。僕は持参した手土産もここでお渡しするようにしています。 (2)時間のリミットをうかがう 事前に面談時間をしっかりとっていただく約束になっていても、当日急遽短縮を求められるケースは少なくありません。 上場企業の経営者Kさんにインタビューした時です。僕はアポ数日前の先方へのリマインドで1時間いただける確約を得ていました。ですが、当日現地入りすると秘書の方から「申し訳ありませんが、今日は20分でお願いできますでしょうか」とのリクエスト。いきなり3分の1の時間短縮には正直うろたえました。予め質問に優先順位をつけていたので何とか乗り切れましたが、以来僕は面談当日お相手にお目にかかった際は、本題に入る前に必ず面談終了のリミット(おしりの時間)をうかがうようにしています。先方からいきなり切り出されるのではなく、自分から心してうかがうと、動揺が比較的小さくすむからです。 アポの結果は、連絡を取る前にほぼ決まっている。会える確率を高める準備からスムーズな対話への入り口、効果的な質問、関係を深めるための気遣いまで。コネゼロ、知名度ゼロから2000人以上への取材を成功させたインタビューのプロが失敗しない「人との会い方」のコツを包み隠さず大公開。公私で使えるノウハウ満載 『会う力 シンプルにして最強の「アポ」の教科書』 (3)面談概要を改めてお伝えする 事前にお伝えしていることを再確認することに違和感を覚える方もいるかもしれません。多忙ななか時間を割いてくださっているお相手を前に、早々に本題に入った方がよいのでは? と思う方もいるでしょう。ですが、どうかはやる気持ちはおさえて、必ずこの時間を設けましょう。当日ご本人にお目にかかると、そもそも面談内容そのものが伝わっていなかったり、主旨が正しく伝わっていなかったりすることも少なくないからです。むしろ伝わっていないことが当たり前くらいに思っていた方が良いかもしれません。 ゆえに、改めて直接お相手に面談概要をお伝えすることが重要です。長々と説明する必要はありません。たとえば作家の方にお目にかかる場合、僕なら「本日は〜〜(著作名)についてお話をうかがいたく存じます」「具体的には、〜〜と〜〜(メインテーマ)について詳しくうかがえますと幸いです」など、ほんのひとことふたこと交わせば、お相手がどのくらい理解してくださっているかはすぐに分かるはずです。あとは必要に応じて細かいニュアンスをお伝えしたり、お相手から何か質問があれば丁寧にお答えしたりすれば大丈夫です。 今日なぜこの場があるのか。ゴールは何なのか。本題に入る前にお互いしっかりと共有できれば、双方にとってよりよき場となるでしょう。 緊張で頭が真っ白になったら 緊張しないようにしようと思えば思うほど、かえって緊張してしまった——そんな経験をした方は少なくないと思います。そこでおすすめしたいのが、緊張している自分自身を認め、お相手にもさらけ出してしまうことです。 僕自身、面談の冒頭でほぼ毎回、緊張していることを素直にお伝えします。お目にかかれたことの感謝や喜びとともに伝えれば、いぶかしがられることはまずありません。むしろ「ああ、それほど今日の場を真剣に思ってくれているのだな」と好意的にとってくださり、緊張をほぐしていただいたことも少なくありません。 もちろん、その後の面談中も緊張が完全になくなることはないでしょう。お相手が自分の憧れの方だったり、著名な方だったりすればなおのこと。ましてお相手から想定外の返答や質問があったときは、とたんに頭が真っ白になってしまうこともあるでしょう。 しかし、そんなときでも基本のスタンスは同じです。テレビの生放送ではないのですから、正直に「申し訳ありません。緊張のあまり頭が真っ白になってしまいまして……」と真摯にお伝えすれば大丈夫です。そして、まずはすーっとひと呼吸おいて、心の中でこう問いましょう。 「自分はなぜこの場にいるのか?」 これはあなたがこれまでのステップで何度も繰り返してきた自問です。きっと答えはすぐに出てくるでしょう。それでもなお、気持ちが落ち着かなかったら質問をこう変えてみましょう。 「今日この場でこれだけは持ち帰りたいこと(≒お相手にうかがいたいこと)は何か」 あなたにはこの間が永遠のように感じられるかもしれませんが、おそらくほんの10〜20秒。すでに緊張をお伝えしているのですから、先方はあなたほど沈黙を気にしていないことがほとんどです。どうしてもお相手の視線が気になる方は、ノートに何かを書きながら考えるのがおすすめです。 *** この記事の後編【大切なのは「会った後」 本物の人間関係を築くために必要なアフターケア】では、“会った「後」”こそ大切だと語るプロインタビュアーの早川さんが、具体的には何をすべきかを指南しご紹介している。 デイリー新潮編集部