「相互関税」日本は24%どう対処?トランプ発言に隠された「交渉のヒント」とは【Bizスクエア】

「相互関税」や「自動車へ追加関税」に対し、日本はどのような交渉ができるのか?実は、そのヒントが「大統領令」や「トランプ氏の発言」に隠されているという。 【データで見る】相互関税は「めちゃくちゃいい加減」 「相互関税」日米の株価は大幅下落 「やられたらやり返すという意味だ」 4月2日、トランプ大統領がこう述べ発表した「相互関税」は、 ▼全ての国・地域が対象の【一律10%】(5日発動)と ▼関税率や非関税障壁を踏まえ、約60国・地域が対象の【上乗せ税率】(9日発動) 2つの合計で、 日本には24%の関税を課すというもの。 そして相互関税とは別に、輸入自動車に対する「25%の追加関税」も3日に発動。 日本から乗用車を輸出する場合、【もとの関税2.5%】+【追加関税25%】= 【27.5%】となり、対米輸出額の約3割を占める日本の自動車産業へのダメージは甚大だ。 東京株式市場の株価は2日間で2000円近く下落し、4日の終値は約8か月ぶりに3万4000円台を割り込んだ。 3日のニューヨーク市場でもダウ平均株価が前日より1600ドル以上下落。 4日に、中国が米国からの輸入品に相互関税と同じ「34%の報復関税」を発表すると、米中貿易摩擦が激しくなるとの懸念が広がり、ダウは2231ドル安と過去3番目の下げ幅で取引を終えた。 広がる「懸念」に“どこ吹く風”のトランプ氏 【アメリカ国内での受け止め】はどうなのか? ワシントン支局の涌井文晶記者によると、「景気の先行きや物価の上昇に大きな懸念が広がっている」という。 ▼4日には、FRB(連邦準備制度理事会)のパウエル議長が ⇒「物価上昇の加速や経済成長の鈍化が起こる可能性が高い」と指摘 ▼大手金融機関のモルガン・スタンレーやJPモルガンなども ⇒「2025年、アメリカが景気後退に陥る可能性が高まった」という見方を示した 一方のトランプ氏はというと… 涌井記者: 「4日は一日ゴルフ場で過ごし、SNSでは外国人投資家に向けて<私の政策は今後も決して変わらない。今はかつてないほど金持ちになるときだ!!!>と発信したり、3月の雇用統計で就業者数が増えたことについては、<すでに関税の効果が出ている>などと投稿するなど、広がる不安もまったくどこ吹く風という様子」 相互関税「交渉の余地」は? 涌井記者によれば、「そもそも交渉の入口に入れるのかどうかすらわからない状況」だというが、背景にあるのは、関税政策を担当するラトニック商務長官の発言だ。 3日に相次いで出演したテレビ番組では、 ⇒「トランプ大統領が関税政策を撤廃する可能性はないと思う」と断言 ⇒各国との交渉についても「高い関税と非関税障壁をなくした時だけ我々と交渉ができる」と厳しい条件を提示した。 一方で“今後のアメリカ国内の状況”が1つのポイントになる可能性も指摘する。 涌井記者: 「高関税を続ければ、アメリカ国内でも物価上昇や景気の悪化が起こる可能性が高い。今後さらに実体経済の悪化を示すような指標が出てきたり、有権者の不満が高まり、2026年に中間選挙を控えた下院議員から政策の修正を求める声が上がってきた時に、見直しに動くのか、それでも動かないのかというのが注目点だ」 相互関税は「めちゃくちゃいい加減」 国・地域別の相互関税を見るとアジア諸国に厳しいものとなっている。 ▼カンボジア⇒49% ▼ベトナム⇒46% ▼スリランカ⇒44% ▼中国⇒34% ▼台湾・インドネシア⇒32% ▼韓国⇒25% ▼日本⇒24% ▼EU⇒20% ▼イギリス・ブラジル・オーストラリアなど⇒10% ※鉄鋼・アルミ・自動車・医薬品・半導体・エネルギーなどは対象外 ※カナダ・メキシコは対象外 では、その相互関税はどのように計算されたのか? USTR(米通商代表部)が明らかにした計算式は、 【相手国との貿易赤字額】を【相手国からの輸入額】で割り、それを「ディスカウント」として半分にするという杜撰なもの。 経産省米州課長などを歴任し、鉄鋼・自動車など日米の通商交渉を最前線で担当してきた細川昌彦さんも「めちゃくちゃいい加減」と呆れ顔だ。 『明星大学』経営学部教授 細川さん: 「本来は商務省やUSTRの専門家が計算してやらなきゃいけないが、イーロン・マスク氏によって早期退職に追い込まれて人手が足らないし、相手の国や地域は60もある。そこで便宜的にとナバロ上級顧問が出した案に従って計算すれば、ちょうどトランプ氏がイメージしているような数字に近いなと。ただ、この数字にこだわっているわけではなくて、とりあえずのスタート台で、ここから交渉が始まる」 大事なのは「トランプ氏との会話」 東南アジアの国々は、中国からの迂回輸出の影響でアメリカの貿易赤字が大きくなり相互関税で高税率となっているが、すでに対策に動いている。 細川さん: 「ベトナムはトップがすぐにトランプ大統領に電話をして『アメリカからの輸入品全部関税ゼロにします』とまで言っている。だからベトナムとアメリカの間で協定を結ぶ交渉をしましょうと。カンボジアも関税を下げると表明している。なので厳しい対応をしているEUとか中国だけを見てはだめで、他の国々はそういう動きもしているということも併せて見る必要がある」 一方、日本はというと、3日までに石破首相が示した方針は2つ。 ▼関税の除外を働きかける ▼影響を受ける中小・小規模事業者向けに日本政策金融公庫のセーフティーネット貸付の利用条件の緩和などで国内対策をする しかし、「大事なのはトランプ氏との会話」だという。 細川さん: 「今のトランプ政権は、トランプ大統領が決めてる。ラトニック商務長官が決めているのではないから経産大臣がいくら訪米をしたり電話をしたりしても、ほとんど意味がない。だからベトナムのように即座にトランプ氏と会話をしなきゃいけないのに、未だにしていない。石破総理にしかやれないことをやってない、これが問題」 交渉材料のヒントは「大統領令にある」 さらに細川さんは、日本が【交渉で切れるカード】について、大統領令にヒントがあると指摘する。 <相互関税の大統領令> 「相互関税は根本的な条件が満たされた、解決された、または緩和されたと私が判断するまで適用される」 ▼報復措置を取った場合は関税を引き上げ ▼非互恵的貿易協定を是正し、経済及び国家安全保障問題においてアメリカと足並みを揃える重要な措置をとった場合は関税引き下げ 細川さん: 「非互恵的貿易協定に関しては『日米貿易協定を見直して是正しますよ』というのも一つ。それから例えば、先端半導体の対中規制を『アメリカと足並みを揃えて安全保障のためにやってますよ』と。日本がやってることを“ちゃんとやれば関税下げますよ”というようなことを暗に匂わしてる。これから交渉しますということが前提になった仕掛けになっている」 トランプ氏言及の「安倍元首相」もカギ また、トランプ氏が2日の会見で口にした「安倍元首相に『貿易が不公平だから、どうにかしなければいけない』と言ったら、彼は『分かっている』と言った」という発言にもヒントがあるという。 日米貿易協定は、一定の農産品と工業品の関税を相互に撤廃または削減することを定めたもので、2019年に安倍元首相とトランプ氏が結んだもの。 共同声明には【日米両国は協定が履行されている間、その精神に反する行動を取らない】とあり、安倍元首相も当時会見で、「日本の自動車あるいは自動車部品に対し、追加関税を課さないという趣旨であることはトランプ大統領に明確に確認をし、それを認めた」と話している。 細川さん: 「これは言い方が大事で、『約束違反だ』と言うのではなく、トランプ大統領の反感を買わずにむしろ情に訴える。この約束を元に、安倍さんは農産物の関税引き下げという難しい問題で国内を説得したんだと。約束を守ってくれないと、安倍さんが忍びない、安倍さんのために、と訴える相手はトランプ氏だけだし、言うのは石破さんしかいない」 トランプ発言からのヒントは他にも 「日本はコメに700%の関税をかけている」 「トヨタはアメリカで100万台の外国製の車を販売しているがGMは日本でほとんど販売していない」 つまりは、「コメ」と「自動車」でトランプ氏に刺さる話を持っていくということ。例えば、備蓄米を放出した分をアメリカから買うのも1つだという。 細川さん: 「700%の関税というのはものすごい誤解だと思うが、アメリカにどうやって『買っているぞ』と見せるか。自動車も『アメリカで検査して通ったものは日本の道路を走れるようにしてあげるよ』というような言葉で、どうそれをルール化していくか。アメリカは交渉のとっかかりを見せているのだから、それを前提にして日本政府全体で戦略を考えた方がいい」 (BS-TBS『Bizスクエア』 2025年4月5日放送より)

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