画期的な科学研究をたたえる今年の「ブレイクスルー賞」に、国際的な素粒子研究拠点「欧州合同原子核研究機関（ＣＥＲＮ（セルン））」の実験チームが選ばれた。 日本からチームに参加する高エネルギー加速器研究機構（ＫＥＫ）が７日、茨城県つくば市で記者会見を開き、「研究者冥利（みょうり）に尽きる」と喜びをかみしめた。 同賞は、米ＩＴ大手のグーグルやメタ（旧フェイスブック）の創業者らが出資する財団が主催し、「シリコンバレーのノーベル賞」とも呼ばれる。賞金は３００万ドル（約４億４０００万円）で、過去にはｉＰＳ細胞（人工多能性幹細胞）を開発し、ノーベル生理学・医学賞に輝いた山中伸弥・京都大教授らも受賞した。 今年の基礎物理学部門に選ばれたチームは、７０か国から１万３０００人超の研究者が参加しており、スイス・フランスにまたがる大型加速器「ＬＨＣ」で、質量の源とされる「ヒッグス粒子」の性質を精密に測定。ヒッグス粒子との相互作用が強い素粒子ほど質量が大きくなることを示し、重さが生じるメカニズムを解明した。 日本は加速器や素粒子の検出器の開発などでチームに大きく貢献しており、中本建志・ＫＥＫ教授は「日本の工業力、科学技術力があって初めてできた」と今回の受賞に胸を張った。ＬＨＣは今後、装置を改良して２０３０年から新たな実験を始める予定だ。 １３８億年前に宇宙が誕生した当時の超高エネルギー空間では、重力を除く自然界の三つの力（〈１〉電磁気力〈２〉弱い力〈３〉強い力）が統一されていたとする「大統一理論」がある。戸本誠・ＫＥＫ教授は「未知の粒子を発見し、大統一理論の証明を目指したい」と話した。
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