富士山などで大規模噴火がおきて、大量の火山灰が降る事態に備え、気象庁は「火山灰警報・注意報」の運用をおこなうことを明らかにしました。わずか数センチであっても、停電や交通機関の停止など都市機能がマヒするおそれがあります。この「火山灰警報・注意報」について、社会部災害担当・中濱弘道デスクが解説します。【週刊地震ニュース】 ■大隅半島東方沖でマグニチュード6超の地震 震度4が2回 3月31日から4月6日までの期間、国内では震度1以上の地震が29回ありました。このうち震度4の地震が2回です。 ▼4月2日午後11時03分ごろ 鹿児島県志布志市や鹿屋市、宮崎県宮崎市や日南市などで震度4を観測する地震がありました。震源は大隅半島東方沖、地震の規模を示すマグニチュードは6.1、震源の深さは36キロでした。 ▼5日午前4時15分ごろ、 北海道の福島町で震度4の地震がありました。震源は津軽海峡、マグニチュードは4.1、震源の深さは10キロでした。 ▼5日午前6時12分ごろ、青森県八戸市で震度3の地震がありました。 震源は青森県東方沖でマグニチュードは4.2、震源の深さは59キロでした。 ■大隅半島東方沖でマグニチュード6.1超の地震 南海トラフ地震の関連は?(図0407-2) 今回の地震の震源は大隅半島東方沖です。少し北側にある日向灘では去年8月と今年1月に比較的の規模の大きな地震があり、南海トラフ地震の関連について議論する気象庁の臨時検討会もおこなわれました。地震のメカニズムは、東側から沈み込むフィリピン海プレートと陸側のプレートの境界付近でおきたプレート境界型と考えられますが、南海トラフ巨大地震の震源想定域から離れていて影響は無いとみられます。 ■霧島連山・新燃岳で急激な地殻変動 噴火警戒レベル3に 宮崎と鹿児島県境にある霧島連山の新燃岳では火山性地震の増加と山が膨らむ急激な地殻変動がみられたため、先月30日に噴火警戒レベル2の(火口周辺規制)からレベル3の(入山規制)にレベル引き上げとなりました。当初は火口からおおむね4キロの範囲で大きな噴石などに警戒を呼びかけていましたが、その後、警戒範囲は3キロに縮小されています。 噴火警戒レベルは火山活動の状況に応じて「警戒が必要な範囲」と防災機関や住民等の「とるべき防災対応」を5段階に区分して発表するもので噴火警戒レベルはあくまでも火山や火山周辺を対象にしたものです。 ■「火山灰」も量によっては大きな被害も-現在は「降灰予報」で情報提供 気象庁が発表している「降灰予報」は活動が高まっている火山で、仮に噴火が発生した場合に、どの方向に影響を及ぼす降灰があるのか?図で示されています。さらに実際に噴火が発生した後には、詳細な計算をおこなった上で「多量」「やや多量」など降灰の量を色分けして、エリアを示して注意を呼びかけています。 ■「降灰予報」を高度化して、「火山灰警報・注意報」で火山から離れた人にも警戒注意喚起へ 気象庁の検討会が3月末に示した新たな警報などの案です。 ▼「火山灰注意報」降灰量が0.1ミリから3センチ未満の場合に 交通障害などに注意を呼びかける ▼「火山灰警報」3センチから30センチ未満の灰が降ると予想された場合、大規模な交通障害やインフラの障害が起きる可能性が高いとして警戒を呼びかけます ▼さらに上、まだ仮称ですが『一段強い呼びかけ』です。 30センチ以上の降灰で木造家屋などが倒壊してしまうレベルで厳重警戒が必要なエリアに出すことを想定しています。 ■富士山大規模噴火では都心でも”火山灰警報” 富士山で約300年前の時のような大規模噴火がおきて、火山灰が2週間にわたって降り続けた場合の首都圏での降灰分布の様子です。富士山周辺では50センチ以上と木造家屋がつぶれてしまうような降り方となります。神奈川県県央部の厚木でも30センチ、東京の新宿周辺でも10センチほど積もると想定されていて、都心でも「火山灰警報」が出されることになります。 ■2011年新燃岳のマグマ噴火大量の降灰は「火山灰警報」レベル 2011年に新燃岳でおきた300年ぶりのマグマ噴火では、宮崎県側を中心に大量の火山灰が降りました。日中にもかかわらず、視界は真っ暗となり、車もライトをつけて走行しています。火山灰によって道路の状況が悪くなり交通事故もおきています。このような危険な火山灰の降り方の際には「火山灰警報」を出して警戒を呼びかける事になります。 ■「都民の飲み水を守れ」東京都水道局の火山灰対策は 富士山から80キロほど東、神奈川県川崎市多摩区にある、東京都水道局長沢浄水場です。泥などの不純物を取り除く「沈殿池(ちんでんち)」に、何本ものワイヤーの設置が完了しました。 *東京都水道局 大森栄治浄水課長「降灰対策としてこの上にシートのふたを被せるような覆蓋のためのワイヤーとなります」 気象庁から警報などが出された場合、120枚のシートを手動で被せて火山灰が沈殿地に入るのを防ぐ計画だということです。 ■富士山噴火の際に沿線で大量降灰もー小田急電鉄では降灰想定の訓練も *小田急電鉄 安全・技術部 早川謙司課長「噴火による降灰が線路などに積もりますと、踏切や信号などの安全の保安設備に影響を及ぼしまして、列車の安全運行に支障をきたすおそれがございます」 小田急電鉄は、新宿から小田原などを結ぶ路線ですが、富士山の火山灰の影響を多く受ける可能性があるエリアを走っています。小田急では、すでに富士山噴火を想定した図上訓練を行って社内ルールを定めています。 *小田急電鉄 安全・技術部早川 謙司 課長「噴火はですね、これまでの経験のない災害でございますので、国からの情報など、新しい知見を取り入れながら我々が作った社内ルールを見直しを通じて、適切かつ迅速な行動がとれるようお客様の安全に対する取り組みを推進してまいります」 火山による影響は、登山者や火山の周辺に住む人だけの話ではありません。風に流されて遠くまで影響を及ぼす火山灰では交通機関の停止など都市機能がマヒする事もあります。火山灰対策も自分事として備えを進めていく必要があります。