英国の自動車物品税(VED)解説 2025年4月〜 EVや高級車販売に影響の可能性も

今年から一部変更! 英国の自動車税 この記事では、英国の自動車税または道路税として知られる「自動車物品税(VED)」について解説する。 【画像】英国らしさを受け継ぐ? 最新EVハッチバック【ミニ・クーパーSEを写真で見る】 全13枚 英国でクルマを運転したり駐車したりするにあたり、最も注意すべき税金の1つがVEDである。VEDは、公道でクルマを運転するすべての人が支払う年税だ。そのため、クルマを所有している場合は支払う必要がある可能性が高い。 英国の公道を走るクルマに課せられるVEDの概要について紹介する。 VEDは2001年の導入以来、原則的にはほとんど変わっていないが、2025年には電気自動車(EV)、クルマの売買、税率に関するいくつかのアップデートが行われた。 VEDとは一体どのようなものか、対象となる車両は何か、どのように納付するのか、以下をお読みいただきたい。 VEDとは何なのか VEDは、公道で運転または駐車される乗用車、オートバイ、小型貨物車、大型貨物車のドライバーが毎年納める税金である。 英国政府が掲げる大気中の汚染物質削減策の一環として、2001年に現在の形式で導入され、英国全土(イングランド、ウェールズ、スコットランド、北アイルランド)を対象としている。 「道路税(road tax)」と呼ばれることが多いが、VEDは直接的に道路工事の資金として使用されるわけではない。本来の道路税は1930年代に廃止されている。 英国下院図書館によると、2022/23年度のVEDによる税収は74億ポンド(約1兆4000億円)であった。2027/28年度には94億ポンド(約1兆8000億円)に増加すると予測されている。 2020年、EV普及を促進するためにさらなる変更が加えられた。乗用車、商用車、オートバイの小売物価指数(RPI)に合わせて引き上げられ、排出ガス試験体制も従来のNEDCから現在のWLTPに切り替えられた。 2025年4月以降の変更点 2025年4月より、VEDにいくつかの大幅な変更が加えられた。最も大きく調整されたのはEVだ。 EVはこれまでVEDが免除されていたが、この免除が廃止となった。新車のEVは、初年度は10ポンド(約1900円)、2回目の納税以降は195ポンド(約38万円)の標準税率の支払いが義務付けられる。 高額車追加税(ECS)を回避するため、一部メーカーは価格設定を見直している。 2017年4月1日から2025年3月31日までの間に登録されたゼロ・エミッション車または低排出ガス車も、他のすべてのクルマに合わせて、標準税率の195ポンドが適用される。 2025年4月1日以降に登録された新車EVで、定価が4万ポンド(約770万円)を超えるクルマも、標準のVED税率195ポンドに加えて、高額車追加税(ECS)を支払わなければならない。これは所有開始から5年間、毎年適用される。 ハイブリッド車に関してもいくつかの変更がある。CO2排出量1〜50g/kmのクルマ(主にPHEV)の初年度の税率は、10ポンドから110ポンド(約2万1000円)に引き上げられた。CO2排出量が51〜75g/kmのクルマの税率は、30ポンド(約5800円)から135ポンド(約2万6000円)に引き上げられた。 VEDの算出方法 2001年3月1日から2017年3月31日までに登録されたクルマは、CO2排出量に基づいて課税される。 2017年4月1日以降に登録されたクルマはすべて、2年目以降は一律の税率が適用される。 また、車両本体価格が4万ポンドを超えるクルマには、高額車追加税が課される。 2001年3月1日以前に登録されたクルマについては、重要なのはエンジン排気量(立方センチメートル=cc)である。1549cc(およそ1.5L)以下のエンジンを搭載したクルマは、12か月分を前払いすると仮定した場合、年間170ポンド(約3万3000円)となる。一方、1549cc超のクルマは年間280ポンド(約5万4000円)となる。 2017年4月以降に登録されたクルマの課税区分 2017年4月、英国政府はCO2排出量ベースの従来の課税制度に代わる新たな課税体制を導入し、3つの課税区分を設けた。すなわち、ゼロ、スタンダード、プレミアムである。 2017年4月以降に登録されたクルマは引き続き、初年度はCO2排出量に基づく金額を支払う必要がある。2年目以降は、年間195ポンドの標準(スタンダード)税率が課される。 課税額には新車価格だけでなくCO2排出量も関わる。 新車価格(定価)が4万ポンドを超えるクルマは、登録から2年目から6年目まではプレミアムの課税区分となる。登録2年目から5年間、標準税率195ポンドに加えて、年間425ポンド(約8万2000円)を支払う必要がある。 2001年3月から2017年4月までに登録されたクルマの課税区分 2001年3月から2017年4月までに登録されたクルマには、『A』から『M』までの13の課税区分が設けられている。この区分はCO2排出量に基づいて決まる。 CO2排出量が100g/km未満の低排出ガス車は、これまで免除されていたが、今後はVEDとして年間20ポンド(約3900円)が課税される。 VEDの免除対象となるクルマ 一部のクルマはVEDが免除される。 1983年1月1日以前に製造された「歴史的車両」もVEDの支払いは免除される。例えば、フェラーリ250 GTOは追加支払いなしで公道を走らせることができる。 1983年以前のヒストリックカー(歴史的自動車)はVEDが免除される。 障害者用車両もVEDの支払いは不要である。身体に障害があり、クルマを運転している場合は障害者控除を申請できるが、これは1台のクルマにのみ適用される。 最高速度が車道で時速8マイル(約13km/h)、歩道で時速4マイル(約6km/h)に制限されている車両や電動車椅子にはVEDは適用されない。 標準的な乗用車以外では、農業、園芸、林業に使用される車両も免税対象となる。これには、トラクター、軽農業用車両、および「限定使用車両(limited-use vehicles)」が含まれる。蒸気自動車も免税となる。 クルマを所有していても公道で運転しない場合は免除されるが、法定オフロード通知(SORN)を運転免許庁(DVLA)に申告する必要がある。この申告を怠ると、たとえ不動車であっても税金の支払い義務が生じるので注意が必要だ。 逆に、クルマを公道で使用する場合は、使用前にVEDを支払う必要がある。 VEDの支払い方法 VEDの支払いは、さまざまな方法で行うことができる。 オンラインで支払う場合は、英国政府の公式ウェブサイトから手続きが可能だ。クレジットカードまたはデビットカード、および以下の書類のうち1つ以上が必要となる。 ・既存の税金が失効する際に送付されたV11通知書 ・クルマの名義(自分の名前)が記載されているV5C登録書類 ・クルマを購入したばかりの場合はV5C/2新規所有者補足書類 ・SORNの未納または未申告により法律違反となる可能性がある場合に送付される「ラストチャンス」警告書 ・オンラインで支払いたくない場合は、DVLAに電話(番号:0300-123-4321)して支払うこともできる。ただし、この番号は無料ではないので注意が必要だ。 また、自動車税の処理に対応した郵便局でも支払うことができる。その際には、以下のいずれかが必要となる。 ・既存の税金が失効する際に送付されたV11通知書 ・クルマのV5C登録書類(所有者の名前が記載されているもの) ・クルマを購入したばかりの場合はV5C/2新規所有者補足書類 北アイルランドでは保険証書を持参する必要がある。 6か月分または12か月分を一括で支払うか分割で支払うかによって、納税額が若干異なることに注意が必要である。 納税額の詳細は、DVLAのウェブサイトで確認できる。 納税証明書の表示は必要か? 2014年に納税表示制度が廃止されたため、クルマの窓に証明書を表示する必要はなくなった。 ただし、クルマを売却または購入した場合、VEDは新しい所有者に移行されなくなった。新しい所有者は、そのクルマを運転する前に、新たに税金を納める必要がある。 よくある質問 Q&A VEDはいつ支払うべきか? VEDは、車両の所有者となった時点で支払う必要がある。 VEDを支払わないとどうなるか? VEDを支払わないで英国の公道を運転することは違法である。違反した場合、80ポンド(約1万5000円)の罰金が科せられるが、33日以内に支払えば罰金は半額の40ポンド(約7500円)となる。VEDを支払わずに運転すると、最高1000ポンド(約19万円)の罰金が科せられる可能性がある。パトカーに気付かれなかったとしても、英国各地に設置されている自動ナンバープレート認識(ANPR)カメラに見つかる可能性がある。 個人でクルマを購入した場合でも、VEDを支払う必要はある? 現在、所有者の間で自動車税を移行することはできない。つまり、クルマを売買した場合、新しい所有者はVEDの全額を支払う必要がある。ただし、VEDを支払った直後にクルマを売却した場合は、DVLAから税金の払い戻しを受けることができる。

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