地域防災の要である消防団員の減少に歯止めをかけようと、千葉県柏市は４月から団員の年額報酬を３５００円増額して４万円に引き上げる。 　流山市は、技量を競う大会の方式を変更して団員の負担軽減を図り、外国人の入団も検討する。団員減少が続けば大災害時の対応力に不安が残るとして、各市町村は団員募集に知恵を絞っている。（木村透） 　総務省消防庁によると、本県の消防団員数は２万２６０１人（昨年４月時点）で前年より４５６人減った。充足率（定数に対する実数の割合）は８２・２％で、全国平均を３・２ポイント下回る。 　こうした状況の中、柏市は新年度予算に消防団員の処遇改善費として８０００万円を計上した。団員の年額報酬は、２０２１年に２万３５００円から国の標準額の３万６５００円に引き上げたばかりだが、さらに４万円に引き上げる。引き上げ後は県内３番目の高水準となる。班長や分団長、団長などの階級も４５００〜３万５００円アップする。 　市消防団課によると、市内の全４３分団の定数は計６３１人。１９年までは充足率１００％だったが、２０年に減り始め、昨年は５６０人まで減少した。「減少に歯止めをかけたい。災害時には、地元をよく知っている消防団が力になる。このままでは不安が残る」（同課）としている。 ◇ 　総務省は２１年、全国的な消防団員減少の対策として、団員の年額報酬の標準額を３万６５００円とし、全国の自治体に通知した。これにより県内自治体の多くは現在標準額となっている。２万５０００〜２万８０００円の匝瑳、鴨川、勝浦市なども４月からは標準額となる見込みだ。 　２月１日号の広報誌の表紙で消防団員のインタビューを掲載し、入団を呼びかけた流山市では、２月２６日の市議会で、「操法大会」という団員の技量を競う大会のあり方が議論に取り上げられた。市側が大会についてアンケートを行ったところ、５９％が「負担が大きい」と回答したとし、今後は、競技の部と順位をつけない技術確認の部に分けて実施すると、市側は答弁した。 　市消防総務課は「仕事をしながら土日や夜間に訓練を行うのは、体力的にきつい。家族だんらんにも影響が出るとの声があった」としている。 　松戸市や我孫子市などでは地域ぐるみで消防団を応援しようと、協力店を募り、団員の飲食費や買い物代を割り引く制度を導入している。 外国人の受け入れも検討 　全国の消防団員数は約７４万７０００人（昨年４月時点）で、前年より約１万６０００人減った。総務省は対策として、〈１〉処遇改善〈２〉団員の負担軽減〈３〉女性や学生団員の増強〈４〉外国人の業務範囲の明確化——などに取り組んでいる。 　女性団員は年々増加しており、本県でも、柏市がおそろいのＴシャツで活動をＰＲするなどしている。大学生や専門学校生向けには、市町村が「学生消防団活動認証証明書」を発行し、就活の自己ＰＲに活用してもらう制度があり、千葉や銚子、市川など１４市が導入している。 　外国人の消防団活動については、公務員の公権力行使には日本国籍が必要という内閣法制局見解（１９５３年）があるため、業務範囲が不明確となっていた。 　同省は今年１月、外国人が担える活動として、〈１〉ホース運搬などの後方支援〈２〉避難誘導〈３〉要救助者の救出や手当て——などを挙げて公表。火災現場からの退去を命じたり、消火活動中に家屋を破壊したりすることなどは、公権力の行使に当たるため担えないが、県内でも外国人の入団を前向きに検討する自治体が出てきている。