連載:アナログ時代のクルマたち|Vol.49 BMW327クーペ&カブリオレ

今でこそ、高級車メーカーとしての地位を確たるものにしたBMW。創業は1913年と100年を超える歴史を持つが、実は車を作り始めたのは1928年のことだから、まだ100年経っていない。しかも、その始まりはアイゼナハのDixi工場を買収して始まったものである。当時そこで生産をしていたのは、オースチン7のライセンスカーであった。BMWが買収後の車名は、3/15。排気量僅か750ccの小さな車であった。 【画像】BMWの歴史上で大きな意味をもつ、BMW327(写真6点) 完全にBMW自身の設計として車が誕生するのは、1932年。若干大型化した788ccのエンジンは、依然としてオースチン7ベースであったが、クランクシャフトはそれまでのローラーベアリングに代えて、プレーンベアリングが採用されていた。3/20と呼ばれた車名からスラッシュを取ると、何やら現代のBMW車の名前が浮かび上がる。 BMWを象徴するキドニーグリルが誕生したのは、その次の303と呼ばれたモデルから。排気量は僅か1.2リッターながら、なんと直列6気筒エンジンであった。シルキーシックスと言う代名詞で呼ばれたBMW直6エンジンは、ここからスタートする。M78のコードネームを持つこのエンジンは、その後排気量を拡大し、最終的には2リッターのキャパシティーが与えられた。そして、このエンジンをベースに高性能化したハイパフォーマンス版のエンジンが、M328と呼ばれ、BMWを一躍高性能車のブランドとして認知させることになる、328に搭載されるのである。 328でレースを始めたBMWは、いきなり1936年のニュルブルクリンク・アイフェルレースで、2リッター以下のクラス優勝を成し遂げる。1937年には年間100以上のクラス優勝を遂げ、BMWの高性能ぶりはすっかり定着した。そしてついに1940年には、328ベースのモデルがミレミリアで総合優勝を成し遂げることになるのである。 この328がレースで活躍している真っ最中に、そのイメージを携えたツーリングカーとして誕生したのが327である。メカニズムの大部分はセダン版の326から引き継いでおり、エンジンも2リッター版のM78で、高性能なM328ではなかったが、実は高性能版として特別注文で328用の3キャブレターと、異なるインテークマニフォールドを備えたM328仕様のエンジンが搭載されたモデルが482台作られている。(カブリオレ)クーペの328エンジン搭載車はさらに少なく、僅か86台であった。 誕生したのは1937年のこと。最初はカブリオレのみ。そして1年遅れてクーペモデルが登場するのだが、価格差がほとんどなかったことから大半はカブリオレであり、クーペの存在は稀少である。また、その直後に第2次世界大戦が勃発。戦前の327の生産はそれによって中止の憂き目のあうのだ。戦後になって東西に分割されたドイツにおいて、戦前に自動車の中心都市であったアイゼナハは東側に属し、当時のソヴィエトが接収したBMW工場を返還しなかったことで、戦後にここから再び327が生産されることになった。 しかもその生産は1945年から1955年まで続いたのである。最初の150台ほどは、再開した新工場(と言っても旧工場だが)、アウトヴェロ(Awtowelo)の名で呼ばれた新会社で生産されたが、ここは1952年に VEB Automobilwerk Eisenachに改名。そしてそれ以降、1955年まで、ここで327が生産された。その数合計505台と言われている。そして東西冷戦がはじまり、BMWの商標が使えなくなって以降、BMW327は、新たにEMW327と呼ばれるようになった。EMWはEizenach Motoren Werkの略で、エンブレムも青と白のバイエルンの紋章から、赤と白に色を変えて周囲に Eizenach Motoren Werkの文字をちりばめたエンブレムに変えられている。 ロッソビアンコ博物館のカブリオレは、博物館のガイドブックによれば1936年製とあり(1937年デビューのはずだが)、一方のクーペの方はガイドブックには掲載されていないので、後年博物館に入庫したモデルなのかもしれない。いずれもBMWのエンブレムをつけているが、実は戦前のBMW製327は、戦争で消失したモデルが多く、残っているのはEMWが多いと言われている。ただ、エンジンルームを見るとバルクヘッドの右端に型式番号を記したプレートがあり、そこを見ればBMWであるのか、EMWであるのかが判別できる。 私は実は1度だけこのBMW327に乗ったことがある。距離にして100km弱。1977年、当時ミュンヘンに住んでいた私は、まさにBMW本社と目と鼻の先にあるアパートにいた。そしてこの年、第1回BMW オールドタイマーミーティングが本社を舞台に開催され、博物館の中からも、ミレミリアで優勝した328ミレミリアが登場するなど、なかなか盛況なミーティングであった。この後、クラシックBMWのオーナーたちはそれぞれの車に乗り込み、ミュンヘンから南にプチツーリングに出かけるのであるが、なんと327のオーナーが、写真を撮っている私に声をかけてきて、「乗ってくか?」と誘ってくれた。そんな申し出を断るはずもなく、かくして私はBMW327のパッセンジャーシートに収まることになった。その時の写真と、確かに乗って前方を走る328を捉えた証拠写真がある。327は実に軽快で、予想外に快適だったことを覚えている。 文:中村孝仁 写真:T. Etoh

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