愛知県碧南市が、前市長の祢宜田（ねぎた）政信氏（73）を市政功労者の一人として表彰することがわかった。 　祢宜田氏をめぐっては、3月に東京地裁が解散命令を出した世界平和統一家庭連合（旧統一教会）との関係が、市長在職中より指摘されていた。市は「市長としての在職期間などが表彰基準に該当した」と説明するが、一部の市民などから抗議の声が上がっているという。 　祢宜田氏は市議を経て2008年から市長を4期務めた。昨年4月、5期目をめざした市長選で、元市議の小池友妃子・現市長（55）に敗れた。 　市秘書課によると、市政功労者は「住民福祉の向上に貢献または公職に多年従事し、その功績が顕著な人」が対象で、今年の表彰で57回目。民生委員や教員、医師、市議など毎年15〜20人ほどが選ばれているといい、「市の重責を担う市長は、たとえ1期のみでも対象になる」という。 　毎年12月末ごろから各部局で検討が始まり、市の案を住民組織や商工団体、女性団体の各代表ら8人からなる「表彰審査会」で審議する。今年は2月5日に7人が出席して審査会があり、市の提案に特に異論は出ず、祢宜田氏を含む18人が功労者に選ばれた。 　祢宜田氏をめぐっては、市長に初当選した08年の選挙時から、全国霊感商法対策弁護士連絡会が旧統一教会と関わりがあるとして公開質問状を送るなど関係が取り沙汰された。また、教団の友好団体「天宙平和連合（UPF）」が中心となった21年のイベントの実行委員長や、別の友好団体「平和大使協議会」東愛知地区の共同議長を務めた過去があり、市議会でも一部の議員が関係を追及していた。 　市秘書課の担当者は「現職の公職者は対象にならないが、祢宜田氏は昨年の選挙の結果、公職者でなくなったので、基準に照らして今年の対象者となった」という。また、市は選ぶ際に思想や信条による区別はしておらず、担当者は「祢宜田氏は現職中に議会答弁で教団について『公務として関わったことはない』と答弁しており、表彰の対象から外す理由もない」と説明した。 　ただ、祢宜田氏の表彰が市の広報で公表された3月下旬ごろから、同課には1日に数件程度抗議や問い合わせの電話などがあるといい、同課はその都度、経緯を説明しているという。 　表彰に関し、祢宜田氏は朝日新聞の取材に「市長時代、皆さんの意見に耳を傾け、議会のコンセンサスを得ながら市政を運営してきた。不法なことは一切しておらず、行政をゆがめるようなことはなかったと信じる。それを踏まえて選んでいただいたと思っており、授賞を受けない理由はないと考えている」と述べた。その上で、「思想や信条は内心の問題で、どの政党を支持しているかや、どの宗教を信仰しているかなどを選考で問うならば、それこそが問題ではないか」と話した。