歯間ケアは歯みがきの前か後か そもそもフロスとは、歯ブラシの毛先が届かない部分を掃除するために開発された細い糸状の用具だ。主に糸巻きタイプとホルダータイプがあり、Y字やF字型のホルダータイプはコンビニやスーパーでも数百円で購入できる。 歯間ブラシも歯間ケアの道具として知られている。フロスとは違い、汚れを落とす部分が糸ではなくブラシ状だ。ブラシ部分はナイロンやシリコン素材で、歯の隙間にフィットしやすいようになっている。では、フロスと歯間ブラシはどう使い分けをするのが正しいのだろうか。 東京科学大学教授（歯科公衆衛生学分野）の相田潤氏は、こう解説する。 「歯間ブラシはブラシ部分が大きく、歯ぐきが健康な方だと入らないことがあります。無理に入れると歯肉を傷つけてしまうため、フロスを使ったほうがいいでしょう。 ただ、歯周病などで歯ぐきが下がってくると歯と歯の隙間が空いてきます。その場合は、歯間ブラシを使って汚れを取るのがオススメです」 食べかすが詰まる隙間の広い部分には歯間ブラシ、歯と歯の接する面など隙間の狭い部分であればフロスといった形で使い分けをするのが吉だ。 フロスの場合は歯と歯の間に入れ、歯の側面から歯周ポケットの中までフロスを上下に動かすだけ。歯間ブラシの場合は、歯と歯間ブラシが直角に交わるように歯間に差し込んで、3往復ほどさせれば十分だ。いずれも激しく動かすと歯肉を傷つけてしまうため、丁寧に行ってほしい。 正しい口内ケアを行おう 「入れ歯をしている方は、入れ歯にこびりついた汚れにひそむ細菌も誤嚥性肺炎を引き起こす原因になります。義歯洗浄剤を溶かしたぬるま湯に義歯を毎日つけて、浮いた汚れを歯ブラシで落としてください」（相田氏） 歯間ケアをする際はタイミングにも注意する必要がある。歯学博士で東京科学大学非常勤講師の照山裕子氏はこう語る。 「ブラッシングの際に使用する歯みがき剤には、歯ぐきに炎症を起こすバイオフィルム（歯垢）を分解したり、細菌の増殖を抑えたりする役割があります。ところが隙間に食べかすが詰まったままでは、こうした薬用成分が隅々まで行き渡らない。デンタルフロスや歯間ブラシによる歯間清掃を先に行った後に歯ブラシを使ったほうが、歯みがき剤の効能を享受できるのです」 より綿密な口内ケアをするのであれば、毎日の「舌みがき」も心がけておこう。 歯科衛生士で歯科衛生士事務所「ピュアとやま」代表の精田紀代美氏がこう解説する。 「菌は歯や歯肉だけではなく舌にも発生します。とりわけ、カンジダ菌は舌で繁殖しやすいとされていて、飲食物と一緒に肺に入ると誤嚥性肺炎を引き起こしやすいのです。睡眠中は口内が乾燥して細菌が増殖するので、朝食前に舌みがきをするのがベスト。特に、舌の奥側は鼻から吸い込んだ細菌が落ちて溜まる場所なので丹念にみがきましょう」 我流で歯みがきをしても万病のもとになるだけ。適切な方法で口内ケアを行いたい。 「週刊現代」2025年3月29日号より 「歯周病で抜歯」が命取りに…！法医学者が語る、抜歯が引き起こす「突然死」の危険性