25日に発表された2024年の移住希望地ランキングで、群馬県が初めて1位になった。2年前は9位だったが、なぜ今、群馬に移住者が急増しているのだろうか? 【画像】川がそのまま天然の大露天風呂 群馬・中之条町の観光スポット「尻焼温泉」 ■「上毛三名湯」の四万温泉が有名 中之条町群馬県 山本一太知事 「この度、2024年の移住希望地ランキングが公表され、群馬県が全国1位となりました。知事としてこんなにうれしいことはありません」 移住希望地ランキングで初の1位を獲得し、群馬県の山本知事は喜びの会見を行った。 2023年度の群馬県への移住者は、前年からおよそ11.7%増加し、過去最多の1479人になった。 群馬県民 「冬は寒い。夏は暑いんですよ。だから、それがちょっとたえるのが大変」群馬県民 「からっ風が激しすぎて、もう毎回帰り帰れないみたいな。自転車頑張ってこいでるんですけど、(時間が)行きの倍くらいかかるんで」 群馬県民が驚くなか、ここ5年で移住者が急増しているのが、群馬県の北西部に位置し、都心から車で2時間ほどの距離にある中之条町だ。 豊かな自然に囲まれ、「上毛三名湯」に数えられる四万温泉など、豊富な温泉を誇る人口1万4000人ほどの町だが、2023年度には144件227人が移住している。 中之条町に移住した相田哲也さん(30代) 「ここが家になります」 おととし、千葉県柏市から移住した30代の相田さん夫妻。 中之条町に移住した妻・永美さん(30代) 「景色もやっぱり最高ですし、春夏秋冬もすごく美しいんですね」哲也さん 「移住する前にも見たりしてたので、私結構滝とか好きだったりするので、それもここに住もうって移住する決め手の一つにはなりましたね」 夫の哲也さんは築200年の古民家の古い梁(はり)や土壁を生かし、リノベーションしている。 哲也さん 「壁と天井と床は全部自分でやりました。移住する前から薪(まき)ストーブ良いなっていう憧れがあった」 「この先が元々使われていない浴槽があったので。デッドスペースになっていたので、こっちに台所を持ってきて。妻がカフェをやりたいと言っていたので、カフェ仕様に合わせて考えて作りました」 陶器や絵の創作活動に励む妻・永美さん。中之条町に移住後、自宅にギャラリーを開き、今月カフェをオープンした。 永美さん 「飲食をしながらギャラリーで絵を見てもらえるのが、心地の良い空間だったので。自分でそれができたらいいなというので、やりたいな」 近くの山で拾った植物や倒木など、中之条町の自然の素材を作品に取り入れている。 永美さん 「窓を開けると、絶景が常に広がっているので。千葉にいる時に比べると大きな違い。自分が本来やりたかった形の作品を今作れている」哲也さん 「宝の山だよね」永美さん 「宝の山だね」■起業時の補助金充実 若い世代の移住増加中 2人の毎日の楽しみが、中之条町の観光スポットとして知られる尻焼温泉だ。 哲也さん 「私たちがよく来る尻焼温泉」 川底から温泉が湧き、川がそのまま天然の大露天風呂になっていて、一日の疲れを癒やすのが日課になっている。 哲也さん 「開放感。露天風呂の最上級。星空見ながら、浮いてるのが最高」 中之条町の自然に感動し、移住を決意したという相田さん夫妻。しかし、夏は最高気温およそ37℃、冬は最低気温マイナス7℃ほどで、相田さんの住む地域では積雪が40センチになることもあるという。 朝の5時半に起き、雪かきを始め、多い時には一日2回行っている。 哲也さん 「知らなくて大変な思いをするよりは、ちゃんと来て体感してイメージをわかせる。自分たちの中で暮らすイメージを固めてたので、 実際に住んでからギャップがあるかっていうと、ないですね」 町の人からも厳しい冬を確認してからの移住を勧められたという。 相田さん夫妻の移住を後押ししたのが、3年前に中之条町に移住した友人の古平賢志さん(44)。実際に移住してみて感じた良さを相田さん夫妻に伝えた。 古平さんは今年9月に、空き家をリフォームし飲食店を開く予定だ。 古平さん 「自分たちがやりたいことっていうのが、村のためであるということをちゃんと理解してくれる。ちゃんと若い人を応援してくれる」 中之条町では、起業する際の補助金も充実しているため、新しい商売にチャレンジしたいと、20代から40代の若い世代の移住が増えているという。 ■脱サラでゼロから農家に 移住の決め手は… 2019年に中之条町へ移住したリンゴ農家の郷原遼太郎さん(39)。現在、5000平方メートルの果樹園でおよそ500本、10種類ほどのリンゴを栽培している。 郷原さん 「(枝が)上に出ている。こういうのがよくない。渋さが残るリンゴになるので」 リンゴの収穫期間はおよそ3カ月。残りの9カ月間は収穫に向けての準備作業。今の時期行っている枝の剪定(せんてい)はおいしいリンゴを作るために欠かすことができない作業だ。 東京・世田谷区出身で都内でサラリーマンなどをしていた郷原さんだが、ワーキングホリデーで訪れたオーストラリアでの経験が、移住のきっかけになったという。 郷原さん 「30歳になる手前に一回、日本離れようと、オーストラリアで農業を経験したら、自然の中でそのまま生きていくのもいいなと感じて、それがきっかけ」 東京からも遠くなく、自然を感じられる群馬への移住を考えるなか、移住の決め手となったのが、中之条町の新規就農者へのバックアップ体制だ。 郷原さん 「ゼロからですよね。剪定するハサミなんかどうやって使うか分からないし。枝切るのもどこから切ればいいのか分からないし。それを全部教えてもらって」■8年間で移住者は約8倍に 増加の秘密は… 郷原さんにリンゴ栽培のイロハを教えたのが、近所のリンゴ農家の金井国博さん(54)だ。 金井さん 「新規で就農してくれる人がいればありがたいですよね。ただ、その人の人生かかっていることだから、甘いことは言えない」 金井さんの元でゼロからリンゴ栽培を学び、1年半の研修期間を経て、2021年に独立した。 就農後3年目までは150万円、4年〜5年目までは120万円の補助金をもらいながらリンゴを作っている。 しかし、去年、おととしとカメムシと霜の被害に遭い、リンゴがほぼ全滅するという経験もした。 金井さん 「順調に本来ならいくつもりでいたんだけど普通じゃ考えられない、予想できないことがこの温暖化の中で起こっていて。大変な時期に就農させちゃったんだろうなと思ってはいます」郷原さん 「やってみて改めて、大変だなというのは思いますね。ただ僕の場合、補助金が今年まで出るので。逆に補助金が出ているうちにくらってくれて良かったなって。これからの対策の経験になるので」 郷原さんのとっておきの場所が果樹園から車で1分の高台だ。 郷原さん 「何もないんですよ。東京と全く違う生活環境なので。何にもないのが良い」 中之条町では、8年間で移住者はおよそ8倍に増加。その秘密が、移住コーディネーターの存在だ。 郷原さん 「僕の方からどこかに研修させてくださいという形でアプローチしたことはないですね。研修してその後、新規就農という形で全部段取りを組んでくれてたので」 郷原さんの移住を手助けしたのが、中之条町で移住コーディネーターを務める村上久美子さん。村上さん自身も15年前に移住し、地域と移住希望者をつなぐ重要なパイプ役となっている。 村上さん 「(群馬県は)地域のキーマンと県と東京の相談員さんのつながりが多分、他の県より強い。この人のやりたいことがかなう所、地域がありませんかって投げかけて、それだったらうちはいけるかなみたいな話をしたりとか。結構コンスタントに連携をみんなで取っていますね」 (「羽鳥慎一 モーニングショー」2025年2月25日放送分より)