人にとって関心が高い「健康」。それを支える「コンディショニング」という考えがあります。日々の生活で積み上がる疲労を回復させる、毎日の生活をよりよい状態で過ごす、そのような理想を形にしていくため「リカバリーウェア」が注目されています。前回はリカバリーウェアを販売する株式会社テンシャルのBAKUNEとMIGARUについて広報部担当者に話をうかがいました。今回はテンシャルの商品開発や販売戦略などをお聞きしていきますが、まずは昨今のリカバリーウェアの注目度をどう考えるのかについてです。 前編記事『じつは「寝るとき」だけじゃなかった…! 着るだけで疲労回復する「リカバリーウェア」』より続く。 リカバリーウェアが話題になってきている 昨今、リカバリーウェアが注目され、「リカバリー」という考えも浸透しつつあります。その要因の1つがコロナです。コロナによって健康への意識が高まり、そして生活様式も大きく変わりました。家で過ごす時間が増え、家の中でいかに快適に過ごすのか、仕事をするのかと考え、自分の体調にも目が向くようになったのです。 さらにテクノロジーの発展もあり、アプリなどを使って自分の体の調子や睡眠時間の可視化が可能になりました。特に睡眠環境には高い関心が寄せられることもしばしば。自分の睡眠とリアルに直面したとき、改善したいという思いもあります。でも何をすればいいのかわからないという声も少なくありません。 それに、今の生活に新しい物を加えることに抵抗を感じる人もいます。物が増えるのが嫌、管理が面倒という意見もあるでしょう。でも、今使っているパジャマを変えるだけでいいのであれば……。新しくプラスするのではなくスライドさせるだけでいいという手軽さも、リカバリーウェアが受け入れられている背景にあるのです。 上下セットで3万円弱、正直価格は高い。それでも売れているのはなぜ? テンシャルのBAKUNEやMIGARUはトップスのみでも1万円を超えますし、生地によっては上下セットで3万円を超えることもあります。一般的なパジャマやスウェットなどと比べると価格帯は高め。というよりも正直高すぎます……。 それでも人気で売れているのは、疲労回復という効果が期待できることが理由の1つ。これだけの価格のものなので、購入する側は「これって、効果があるの?」と疑問を持つはず。その疑問や期待に応えられるからこそ、受け入れられているのでしょう。 また本当に価値のあるものだからこそ、値段を下げないという理由もあるのではないかと筆者は考えます。商品開発における研究、そしてコストもかかっているわけなので、「価格に反映されていなかったらおかしい」とさえ思います。コンディショニングという価値を提供する以上、品質もそうですが、価格にも妥協はしない。そんな思いがあるのではないかと、筆者は感じました。 新商品開発での苦労 テンシャルは2024年秋冬にも新商品を発売しましたが、開発する上で苦労するのが素材の展開なのだそう。疲労回復や効果の維持はもちろんですが、着用したときの肌触りのよさ、着心地のよさも重要な要素になってきます。でも肌触りの感覚は人それぞれ。万人に通用しないこともあり、できるだけ多くの人に受け入れられる素材を選びます。たとえばベロア素材ひとつにしても、柔らかさが違います。 ソフトニットも、厚みやモコモコ具合が違いますから、たくさんの素材を比べながらベストなものを選び、開発を進めていきます。構想から発売までには1年以上かかるのだそう。 さらに既存の製品でもマイナーチェンジを繰り返しています。最初に販売されたBAKUNEからは10回程度行っているとのこと。最初はロゴを刺繍にしていましたが、肌に当たる裏側がチクチクするという意見があり改善されています。また寝返りがしやすいように腕周りも余裕を持たせるようになりました。細かい部分を変えることで、よりコンディショニングがしやすいように進化しています。 販売で苦戦したことは? BAUKNEは2024年3月に50万枚を突破、9月時点で70万枚を突破しています。今はリカバリーウェアを知っている人も増えていますが、まだまだ当たり前にはなっていません。しかも着るだけで疲労回復なんてなんだか怪しい……。そう思う人も少なくないと思います。効果が期待できるとわかっているけれど、それを理解してもらうのはとても難しいこと。最初の1着を買ってもらうところまでの道のりが長く、ハードルも高いのは事実でしょう。 リカバリーという考えやそのためのウェアを広く知ってもらう、買ってもらうのは、一筋縄ではいかないことです。おそらく価格もハードルを上げる要因になっているのでしょうが、「我々はアパレルブランドではなくコンディショニングブランドです」と話をうかがった担当者は言います。 ただ商品を広げるだけではなく、「健康に前向きな社会を創り、人類のポテンシャルを引き出す。」というミッションに基づいてコンディショニングを当たり前にする、その手段としてBAKUNEやMIGARUがあるという考えです。またこれらのラインだけではなく、バス用品やトラベルグッズ、寝具なども展開しています。 トラベルグッズのネックピロー、実は筆者も旅行で使いましたが、首の裏をしっかりと支えてくれます。そして形を自由に変えられるので、首の傾きを予防してくれるのです。旅をしているときでも、コンディションを崩さないようにすることができます。 コンディショニングという視点になれば、今後は食へのアプローチがあるかもしれません。これまで培ってきたコンディショニングにおける知識や技術を活かしながら、テンシャルはコンディショニングブランドとしてあり続けるのでしょう。 ちょっとブレイク 広報さんがお薦めするのは、実は布団 テンシャルではコンフォーター(布団)も作っています。快適な睡眠環境を提供してくれる冬用として「BAKUNE Comforter Warm」と「BAKUNE Comforter Extra Warm」があります。 実は今回話を伺った広報お2人から、「これ、すごくいいですよ」と言われたものでした。筆者がすでにBAKUNEとMIGARUを使っているからかもしれませんが、とにかく肌触りがよいのだそう。 睡眠中は、布団の中の温度を33度、湿度を50%に保つのが理想です。これを実現するため繰り返し熱を放出・吸収して温度調整をしてくれる「PCM繊維」を中綿に採用しています。さらに肌触りにこだわったのが、今期発売になったコンフォーターです。実際に触ってみましたが、生地はしっとりなめらか。ずっと触っていたくなるような心地よさでした。 ちなみに自宅で洗濯ができるのも、コスト的にも大きなメリット。睡眠を考える上で寝具も重要な要素になってくるのは間違いありません。BAKUNEとコンフォーターを組み合わせることで、よいコンディショニングを得られるのでしょう。 人生100年と言われる中、自分の健康や体調は自分で守らなければなりません。コンディショニングは未来の自分への投資。そんなことを思った取材でした。 じつは「寝るとき」だけじゃなかった…! 着るだけで疲労回復する「リカバリーウェア」