政界再編のシナリオとポスト石破の行方——夏の参院選で自民大敗なら玉木首相誕生!?

国民民主党の玉木代表 少数与党となった石破政権は今年も波乱の一年となる。まず、2025年度予算案は成立するのか? そして、通常国会会期末に内閣不信任案は提出されるのか? さらに、夏の参議院選挙で過半数を取ることができるのか? 政界再編の動きとキーパーソンを探った! 【表】2025年前半の政治の流れ * * * ■予算案と内閣不信任案が今年前半のヤマ場になる! 参議院議員選挙を夏に控える今年。少数与党となった石破 茂政権はどうなるのか? この一年の政界の動きを探ってみた。 まず、1月24日から始まる予定の通常国会。 石破政権は、国民民主党との「103万円の壁」引き上げや日本維新の会との「高校授業料無償化」などの政策協議もあるが、最も重要なのは「2025年度予算案の成立」だ。予算の成立が難しくなると自民党内から「石破降ろし」の声も出てくる。 石破首相 ジャーナリストの鈴木哲夫氏が解説する。 「石破政権の最初のヤマ場は2月末から3月にかけてです。この時期には25年度予算案の採決があります。少数与党としては、野党に賛成してもらわなければ予算が通りません。そのため、国民民主党など野党の提案を多く受け入れることになるはずです。 しかし、それがあまりにも多すぎると、今度は自民党内から『なんでそんなに妥協するんだ』という反発も出てきます。 その結果、『このまま石破首相でいいのか』と自民党内の反石破勢力が動き出し、石破政権の党内基盤がさらに弱まっていく可能性もあります」 「石破降ろし」の声が強まらないように、どこまで妥協して予算を成立させるのか。石破首相の手腕が問われる。 そして、予算案が成立すると、その他の法律案などの審議が本格化する。 立憲民主党の野田代表 「野党は夏の参議院選挙があるため、自民党に対して対決姿勢を取ってくるでしょう。注目は内閣不信任案です。6月の会期末に野党が一丸となって内閣不信任案を提出する可能性があります。 すると、現在は野党のほうが数が多いので不信任案が通ってしまいます。そして石破首相は『内閣総辞職』か『解散・総選挙』を選ぶことになりますが、当然、解散・総選挙を選ぶでしょう。 衆議院を解散すると40日以内に衆議院議員選挙が行なわれます。ですから、6月下旬に解散をすれば7月の参議院議員選挙との�ダブル選挙�になる可能性があるのです。 しかし、もしダブル選挙になった場合、野党は衆院選で勝利するために候補者調整などの準備と覚悟が必要です。そこまで備えて勝負するのか。ですから、6月の会期末に野党が内閣不信任案を出すのかどうかもひとつのヤマ場といえるでしょう」 2月下旬から3月の予算案成立時と6月の国会会期末時に、石破政権は大きな危機を迎えるかもしれない。 ■政界再編でも玉木? 政権交代でも玉木? そして、7月下旬に行なわれるのが参議院議員選挙だ。元厚生労働大臣で政治学者の舛添要一氏が、参院選の結果を予想する。 「私は参院選で自民党も公明党も議席を大きく減らすと思っています。一方で国民民主党や参政党などの政党が票を伸ばすと思います。 その結果、衆議院だけでなく参議院でも与党は過半数割れを起こす可能性がある。今の自民党はそこまで追い詰められているんです」 前出の鈴木氏も同じ意見だ。 「参議院選は民意が反映されやすい選挙だといわれています。理由は衆議院と比べて選挙区が広いからです。 衆議院は選挙区が狭いため、その地域での個人的なつながりが多い候補者が有利になりますが、参議院は個人的なつながりよりも、そのときの世論のほうが結果に反映されやすいのです。すると『自民党はダメだ』という最近の民意が表れやすいというわけです。 また、立憲民主党の野田佳彦代表と日本維新の会の吉村洋文代表は、全国に32ある改選の1人区で候補者の一本化を目指しています。立憲と維新は、野党の中でも左寄りと右寄りで考え方が大きく違います。 この考え方が大きく違う両党が候補者を一本化しようと協議しているということは、立憲、維新を中心とする野党候補統一の流れができるということです。そうなると野党が勝利する可能性がさらに高くなります」 7月の参院選は、どうやら野党の大勝が見えているようだ。衆参で野党が議席の過半数を占めることになると、すぐにでも政権交代は起こるのだろうか。それは早急だと舛添氏が解説する。 「立憲民主党と国民民主党は、もともと民主党というひとつの政党だったのになぜ分かれたのか。それは政策が大きく違うからです。簡単に言えば、立憲民主党は政策が共産党に近い。国民民主党は自民党に近い。 ですから、野党が大勝したからといって、すぐに政権交代が起きるとは限りません。まず、自民党は公明党、国民民主党との3党連立を考えるでしょう。それでも数が足りないならば、ほかの小さな政党とも組む可能性があります。政権を維持するためには、なんでもやるのが自民党です。 1994年に日本社会党の村山富市氏を首相とする『自民党・日本社会党・新党さきがけ』の連立政権が誕生したように、国民民主党の玉木雄一郎代表を首相とする自公国の連立政権が誕生してもおかしくないのです。 玉木代表も自分が首相になれるのであれば、自公との連立に乗ってくるのではないでしょうか。国民民主の党勢を拡大して首相になるよりも早いですし、独裁ではないにしろ首相となればある程度の権力を持てるからです」 ただ、この自公国政権も長くは持たなそうだ。やはり、流れは政権交代に向かっているという。 「政権交代は、これまで自民党が参院選で大敗した後に起こっています。例えば、93年の細川護煕連立内閣が誕生したときは、89年の参院選で社会党が改選第1党になりました。2009年に民主党政権が誕生したときも07年の参院選で民主党が改選第1党になっています。 もし、今年の参院選で改選第1党が野党になれば、次の衆院選でも野党が大勝して、政権交代が行なわれる可能性が高いのです」 7月に行なわれる都議会議員選挙に向けて地域政党を旗揚げする前安芸高田市長の石丸伸二氏。今後、政界の要注意人物になるかもしれない では、そのときのキーパーソンとなるのは誰なのか? 舛添氏は、やはり国民民主党の玉木代表だという。 「昨年の衆院選で自民党が議席を減らしたのは、政党の体質が古くさく、政治とカネなどの問題で国民から批判されているからです。一方の立憲民主党も、あまりに左寄りすぎて国民からの人気がいまいちです。 そこで、政策の多くが自民党と同じで安心感があり、SNSなどを駆使して若者を取り込んだ新しい政党というイメージのある国民民主党が、大きな影響力を持ってくると思います。ですから、今後も玉木代表が政界のキーパーソンとなるはずです。 また、今年7月に行なわれる東京都議会議員選挙に向けて地域政党を立ち上げる石丸伸二氏も要注意人物です。都議選だけでなく、もし参院選にも候補者を立てるということになると『自民党から出たら負ける』と考える議員が、石丸新党に走る可能性もゼロではありません。 そうなると政界再編や政権交代の鍵を握るひとりになると思います」 国民民主党の玉木代表と、石丸新党を立ち上げる石丸氏のふたりが、2025年の政界を左右する人物になるかもしれない。 では、一方の自民党はどうなのか。ポスト石破になりうる人物はいるのだろうか。鈴木氏が答える。 「私は石破首相が自民党を救済する最後のカードだと思っています。もし、石破首相でもダメなら、よほどの変革をしなければいけません。 石破首相と自民党総裁を争った高市早苗さんは『女性初』という看板はありますが、保守色が強いので、広くリベラル派も含めて結集・再建できるのか。 『それならば、ここは自民党で一度まとまろう』ということで、穏健な林芳正官房長官ということになるのか。 それとも『一気に世代交代するしかない』ということで、若手の小泉進次郎氏や�コバホーク�こと小林鷹之氏がいいのか......。 いずれにしても、自民党は今、崖っぷちに立たされている状態です。ポスト石破選びは、かなり難しい選択になると思います」 新たな連立政権が生まれるのか。それとも政権交代が進むのか。いずれにしろ25年の政界は、激動の一年になるはずだ。 取材・文/村上隆保 写真/時事通信社

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